ボルトの強度

建物 構造

今回は鉄骨の設計で使うボルト強度についてまとめていきたいと思います。

ボルト強度は鉄骨接合部の計算を行う上で最も重要な値のひとつと言って過言ではないでしょう。

この記事では初学者でも理解できるようにわかりやすく説明していきたいと思います!

スポンサーリンク

ボルト強度とは

ボルト強度とはせん断・引張などの接合方法によって異なりますが、主にボルト強度を指すのは引張強度です。

ボルトにはそれぞれ強度区分が存在し、その強度区分ごとに対応する基準強度(F値)と引張強度(Fu)が存在します。強度区分の数字は主に引張強度の値を取って表記されていることが下記の表からもわかると思います。

ここで注意したいのが基準強度F値JIS規格の降伏強さは同じ値ではないことです。例えば強度区分4.8はF値が240で降伏強さが340で同じではないです。

また高力ボルトについての記事はこちらでまとめていますので、合わせてご覧ください。

ボルトとは

ボルト・高力ボルト・リベットはファスナ(英:fastener)と総称されます。構造分野では六角ボルト・中ボルトを総称してボルト呼びます。

ボルトの接合の方法は支圧接合になります。支圧接合とはボルト軸方向とプレートが接する面つまり支圧面を介してせん断力を伝達する接合方法を指します。

六角ボルトの強度区分は(4.6, 4.8, 5.6, 6.8, 8.8, 10.9, 12.9 )(4T, 5T, 6T, 7T )があります。

4.6のような強度区分の数字は前の数字が引張強度を指し、後ろの数字が引張強度に対する降伏強度の比(降伏比)を指しています。

例えば4.6の場合は引張強度が400N/mm2 降伏強度が400×0.6=240N/mm2になります。

4Tのような強度区分の数字は引張強度を指し、Tは引張強度(Tension-strength)の頭文字を示します。

例えば4Tの場合は引張強度が400N/mm2になります。

ボルトのせん断力とは

ボルトのせん断力は支圧接合になるので基準強度F値ボルトの有効断面積(高力ボルトは軸断面積なので注意!!)からせん断耐力が決定されます。

記号は[R]や[q]などで表し、単位は[kN]で表します。ボルトのせん断耐力は以下の式から算出されます。

[ボルトの降伏せん断耐力・許容せん断力]

\( R=\dfrac{F}{\sqrt{3}}\cdot A_{e}\cdot m\)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)
m:せん断面数

長期許容せん断力

ボルトの長期許容せん断力は降伏せん断耐力に安全率を除することで計算できます。計算式は

[ボルトの長期許容せん断力]

\( R_{l}=\dfrac{1}{\nu}\cdot\dfrac{F}{\sqrt{3}}\cdot A_{e}\cdot m =\dfrac{2}{3}\cdot \dfrac{F}{\sqrt{3}}\cdot A_{e}\cdot m \)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)
ν:安全率(長期 1.5)
m:せん断面数

短期許容せん断力

ボルトの短期許容せん断力は長期と同じく安全率を除することで計算できます。ただし安全率が1.0となるため、降伏せん断耐力そのものです。計算式は

[ボルトの短期許容せん断力]

\( R_{s}=\dfrac{1}{\nu}\cdot\dfrac{F}{\sqrt{3}}\cdot A_{e}\cdot m=\dfrac{F}{\sqrt{3}}\cdot A_{e}\cdot m \)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)
ν:安全率(短期1.0)
m:せん断面数

最大せん断力

ボルトの最大せん断力は計算式は引張強度Fuボルトの有効断面積からせん断耐力が決定されます。

[ボルトの最大せん断力]

\( R_{u}=\dfrac{Fu}{\sqrt{3}}\cdot A_{e} \)

Fu:引張強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)

強度区分が4TであればFu=400N/mm2 5.6であればFu=500N/mm2

のようにボルトの強度区分の値からすぐにわかるので計算しやすいと思います。

例えば4TのM16のボルトの最大せん断力は

\( R_{u}=400/\sqrt{3}\cdot 201/1000=46.4kN \)

ボルトの引張耐力とは

ボルトの引張耐力はせん断力と同じく基準強度F値ボルトの有効断面積から引張耐力が決定されます。

記号は[R]や[T]などで表し、単位は[kN]で表します。ボルトの引張耐力は以下の式から算出されます。

[ボルトの降伏引張耐力・許容引張力]

\( R=F\cdot A_{e}\)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)

長期許容引張力

ボルトの長期許容引張力は降伏引張耐力に安全率を除することで計算できます。計算式は

[ボルトの長期許容引張力]

\( R_{l}=\dfrac{1}{\nu}\cdot F\cdot A_{e}=\dfrac{2}{3}\cdot F\cdot A_{e}\)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)
ν:安全率(長期 1.5)

短期許容引張力

ボルトの短期許容引張力は長期と同じく安全率を除することで計算できます。ただし安全率が1.0となるため、降伏引張耐力そのものです。計算式は

[ボルトの短期許容せん断力]

\( R_{s}=\dfrac{1}{\nu}\cdot F\cdot A_{e}=F\cdot A_{e}\)

F:基準強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)
ν:安全率(短期1.0)

最大せん断力

ボルトの最大せん断力は計算式は引張強度Fuボルトの有効断面積から引張耐力が決定されます。

[ボルトの最大引張力]

\( R_{u}=Fu\cdot A_{e} \)

Fu:引張強度(N/mm2)
Ae:有効断面積(mm2)

例えば4TのM16のボルトの最大引張耐力は

\( R_{u}=400\cdot 157/1000=62.8kN \)

まとめ

今回はボルトの強度についてまとめてみました。

ボルトの強度は鋼構造設計をするなかで最も重要な値の一つです。この値を基準に接合部のボルト径・本数・配置などを決めたりしていきます。

一級建築士試験においてボルトの強度について問われることはほとんどありませんが、構造設計を生業とする算出の方法を頭の片隅おいておく程度で覚えてください。

ボルトの強度を確認する場合はぜひ本ブログを読み直してみて下さい!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました