風力係数とは(閉鎖型・開放型)

建物 荷重

今回は風力係数についてわかりやすく解説していきたいと思います。

風力係数は建築の構造設計を行う上で必要となる風荷重を求める際に使う値です。風力係数は風荷重を扱う上で重要なキーワードなので、ぜひこの記事を参考にしてみて下さい!!

この記事は平成12年建設省告示 第1454号に準拠します。

風力係数ってなんだ??

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風力係数とは

風力係数とは建物の形状ないしは風の向き、あるいは部材の形状によって変化する風荷重の大きさを係数で表した値です。

例えば同じ風でも風上風下を比較すると風が先にあたる風上の方が大きく風下は小さくなることがイメージできるかと思います。

したがって同じ速度圧(風速)であっても建物形状や風の当たる場所によって建物に与える荷重の大きさ変化すると覚えておいてください。

風力係数の記号は[Cf]で表し、単位は無次元です。風力係数を式で表すと

[風力係数]

\(C_{f}=Cpe-Cpi\)

Cpe:閉鎖型及び開放型の建築物の外圧係数
Cpi:閉鎖型及び開放型の建築物の内圧係数

kzの求め方

kzは地表面粗度区分から求めることができ、風力係数の算定に用います。kzの算定式は

H≦Zbの場合
\(kz=1.0\)

H>ZbかつZ≦Zbの場合
\(kz=\left(\dfrac{Zb}{H}\right)^{2\alpha}\)

H>ZbかつZ>Zbの場合
\(kz=\left(\dfrac{Z}{H}\right)^{2\alpha}\)

H:建築高さおよび軒高さの平均
Z:当該部分の地盤面からの高さ
Zb,α:地表面粗度区分から求まる数値

計算例として地表面粗度区分をⅡ、建築物高さH=20m Z=18mとした場合

\(H>Zb\) かつ \(Z>Zb\)なので適用する式は

\(kz=\left(\dfrac{Z}{H}\right)^{2\alpha}\)

\(kz=\left(\dfrac{18}{20}\right)^{2\cdot 0.15}\)

\(kz=0.969\)

地表面粗度区分についてはこちらの記事を参考にしてみて下さい!!

外圧係数とは

外圧係数(英:external pressure coefficient)とは風が吹いた時に閉鎖型あるいは開放型の建物にかかる外からの圧力です。外圧係数は風上か風下か、屋根面か壁か、検討する箇所によって値が変わります。

加力方向は外から内へ向かう向きを+(プラス)内から外へ向かう向きをー(マイナス)として扱います。

外圧係数の記号は[Cpe]で表し、単位は無次元です。

切妻屋根 (張間方向)

θ:屋根面が水平面となす角度(度)
B:風向に対する見付幅(m)
D:風向に対する奥行(m)
a:BとHの2倍の数値のうちいずれか小さな数値 =min{B,2H}
x:風上端部からの距離(m)

表に掲げるθの数値以外のθに応じたCpeは、表に掲げる数値をそれぞれ直線補間した数値とします。ただし、θが10度未満の場合にあっては正の係数を、θが45度を超える場合にあっては負の係数を用いた計算は省略することができます。

陸屋根 (張間方向)

θ:屋根面が水平面となす角度(度)
B:風向に対する見付幅(m)
D:風向に対する奥行(m)
a:BとHの2倍の数値のうちいずれか小さな数値 =min{B,2H}
x:風上端部からの距離(m)

片流れ屋根 (張間方向)

θ:屋根面が水平面となす角度(度)
B:風向に対する見付幅(m)
D:風向に対する奥行(m)
a:BとHの2倍の数値のうちいずれか小さな数値 =min{B,2H}
x:風上端部からの距離(m)

表に掲げるθの数値以外のθに応じたCpeは、表に掲げる数値をそれぞれ直線補間した数値とします。ただし、θが10度未満の場合にあっては正の係数を、θが45度を超える場合にあっては負の係数を用いた計算は省略することができます。

円弧屋根 (張間方向)

f :建築物の高さと軒の高さとの差(m)
h:建築物の軒の高さ(m) 
B:風向に対する見付幅(m)
D:風向に対する奥行(m)
a:BとHの2倍の数値のうちいずれか小さな数値 =min{B,2H}
x:風上端部からの距離(m)

h/D及びf/Dの数値以外の当該比率に応じたCpeは、表に掲げる数値をそれぞれ直線的に補間した数値とします。ただし、R1部において、f/Dが0.05未満の場合にあっては、正の係数を、f/Dが0.3を超える場合にあっては負の係数を用いた計算を省略することができます。

桁行方向

B:風向に対する見付幅(m)
D:風向に対する奥行(m)
a:BとHの2倍の数値のうちいずれか小さな数値 =min{B,2H}
x:風上端部からの距離(m)

桁行方向は切妻屋根、片流れ屋根、のこぎり屋根等に関わらず陸屋根の場合と同じ外圧係数の値を示します。

内圧係数とは

内圧係数(英:internal pressure coefficient)とは風が吹いた時に閉鎖型あるいは開放型の建物にかかる内からかかる圧力です。

内圧係数は風上か風下かで、値が変わります。屋根面か壁かでは値は変わりません。

加力方向は室内から壁へ向かう向きを+(プラス)壁から室内へ向かう向きをー(マイナス)として扱います。

内圧係数の記号は[Cpi]で表し、単位は無次元です。

内圧係数は屋根形状に関わらず一定の値を示します。つぎに建物が閉鎖型あるいは壁のない開放型かどうかで値が変わります。

閉鎖型の場合は内圧係数が0と-0.2で2パターンを考慮する必要があります。基本的な建物は閉鎖型なのでこちらを考慮する場合がとても多いですね。

開放型の場合は風上開放型あるいは風下開放型かどうかで内圧係数が変わるので気をつけてください。

風力係数の計算例

ここで風力係数の具体的な計算例を示します。

計算条件
  • 切妻屋根
  • B=10m D=15m
  • 閉鎖型の建物
  • 地表面粗度区分Ⅲ
  • 建築物の高さと軒の高さとの平均H=6m
  • 当該部分の地盤面からの高さは計算を楽にするため最高高さのZ=8mとする
  • 屋根勾配15度

1.張間方向の外圧係数を求める

外圧係数の算出にはkzが必要になるので、地表面粗度区分Ⅲから

\(H>Zb\) かつ \(Z>Zb\)なので適用する式は

\(kz=\left(\dfrac{Z}{H}\right)^{2\alpha}\)

\(kz=\left(\dfrac{8}{6}\right)^{2\cdot 0.20}\)

\(kz=1.12\)

つぎにaの距離を求めます

\(a=min[B,2H]=min[10,12]=10\)
\(0.5a=5.0m\)

つぎに場所ごとに外圧係数を求めていきます。

①風上壁面
\(Cpe_{1}=0.8kz=0.8・1.12=0.896\)

②側壁面 風上端部より0.5aの領域
\(Cpe_{2}=-0.7\)

③側壁面 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{3}=-0.4\)

④風下壁面
\(Cpe_{4}=-0.4\)

⑤風上屋根(その1 正の係数の場合) 屋根勾配15度は10度と30度の直線補間した値
\(Cpe_{51}=0.05\)

⑤風上屋根(その2 負の係数の場合) 屋根勾配は10度と30度の直線補間した値
\(Cpe_{52}=-0.825\)

⑥風下屋根
\(Cpe_{6}=-0.5\)

2.桁行方向の外圧係数を求める

kzはそのまま使えるので流用します。

\(kz=1.12\)

つぎにaの距離を求めます。桁行方向に関してはBとDが入れ替わります。B=15m,D=10mとして計算し直します。

\(a=min[B,2H]=min[15,12]=12\)
\(0.5a=6.0m\)

外圧係数は陸屋根の場合と同じ外圧係数になります。

①風上壁面
\(Cpe_{1}=0.8kz=0.8・1.12=0.896\)

②側壁面 風上端部より0.5aの領域
\(Cpe_{2}=-0.7\)

③側壁面 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{3}=-0.4\)

④風下壁面
\(Cpe_{4}=-0.4\)

⑤風上屋根
\(Cpe_{5}=-1.0\)

⑥風下屋根 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{6}=-0.5\)

3.内圧係数を求める

内圧係数は建物形状や屋根勾配の影響を受けないので

①閉鎖型パターン1
\(Cpi_{1}=0\)

②閉鎖型パターン2
\(Cpi_{2}=-0.2\)

4.風力係数を求める

最後に外圧係数と内圧係数を足します。内圧係数が2パターンありますが今回は風力係数の絶対値が最大限となるものを計算します。

張間方向の暴風時

①風上壁面
\(Cpe_{1}-Cpi_{2}=0.896-(-0.2)=1.096\)

②側壁面 風上端部より0.5aの領域
\(Cpe_{2}-Cpi_{1}=-0.7-0=-0.7\)

③側壁面 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{3}-Cpi_{1}=-0.4-0=-0.4\)

④風下壁面
\(Cpe_{4}-Cpi_{1}=-0.4-0=-0.4\)

⑤風上屋根(その1 正の係数の場合)
\(Cpe_{51}-Cpi_{2}=0.05-(-0.2)=0.25\)

⑤風上屋根(その2 負の係数の場合)
\(Cpe_{52}-Cpi_{1}=-0.825-0=-0.825\)

⑥風下屋根
\(Cpe_{6}-Cpi_{2}=-0.5-0=-0.5\)

桁行方向の暴風時

①風上壁面
\(Cpe_{1}-Cpi_{2}=0.896-(-0.2)=1.096\)

②側壁面 風上端部より0.5aの領域
\(Cpe_{2}-Cpi_{1}=-0.7-0=-0.7\)

③側壁面 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{3}-Cpi_{1}=-0.4-0=-0.4\)

④風下壁面
\(Cpe_{4}-Cpi_{1}=-0.4-0=-0.4\)

⑤風上屋根
\(Cpe_{5}-Cpi_{1}=-1.0-0=-1.0\)

⑥風下屋根 風上端部より0.5aの領域以外の領域
\(Cpe_{6}-Cpi_{1}=-0.5-0=-0.5\)

引用元:建築物荷重指針・同解説

まとめ

今回は風力係数についてまとめてきました。風力係数は風荷重を算定するのに必要な知識です。

風力係数は外圧係数と内圧係数の差で表現することができます。

外圧係数は外から受ける圧力の大きさを表し、屋根形式、風を受ける面によって係数の値が大きく変わります。

内圧係数は内から受ける圧力の大きさを表し、屋根形式による影響は受けませんが建物が閉鎖型か開放型かで値が変わります。

風力係数は求めるものが多く、難しいのでもしも忘れてしまった場合はこちらの記事を参考にしてみてください!!

風力係数
  • 外圧係数と内圧係数の差
  • 屋根形式や閉鎖型・開放型かでも風荷重は大きく変わる

コメント

  1. 桃太郎 より:

    内圧係数の+-のオレンジと青の→の向きは逆ではありませんか?

    • TOM より:

      コメントありがとうございます。
      建設省告示第1454号を確認いたしました。おっしゃる通りでした。大変失礼いたしました。
      修正させていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 桃太郎 より:

    いつもテキストとして使わせてもらっています。
    今後とも宜しくお願いいたします。

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