今回は金属・建築の鋼構造で使う引張強さについてまとめていきたいと思います。
引張強さは構造計算を行う上で最も重要な値のひとつと言って過言ではないです。
この記事では初学者でも理解できるようにわかりやすく説明していきたいと思います!
引張強さってなんだ??
引張強さとは
引張強さ(英:Tensile Strength)とは引張応力度の最大値を指し、図の中における④の点に該当します。
一般的に、軟鋼(鉄鋼)の応力-ひずみグラフは図のような特徴を持ちます。初めは線形な領域(弾性域)で応力とひずみが比例しますが、一定の応力まで到達すると非線形な変形の領域(塑性域)が始まります。この両方の領域の境界を降伏点(英:Yield Point)とあるいは上降伏点呼ばれます。(②の点)
さらに力を加えていくと応力は増加せず横ばいあるいは下降線をたどりやがて下降伏点を迎えます。(③の点)
降伏点超えた後は応力が増加と変形が進み④の引張強さに達し、徐々に応力が減っていき最終的に破断します。
一般的には引張強さの記号は[σu]で“u”はultimateの終局を表し、単位は[N/mm2] で表します。
鋼材の引張強さ
鋼材の引張強さはJIS規格によって定められています。一般的な鋼材というのは主に以下のようなものがあげられます。
- SS400, SS490
- SN400A,B,C SN490B,C
- SM400A,B,C, SM490B,C
- STK400, STK490
- STKR400, STKR490
引張強さはSS○○、SN○○というように”○○”の部分が引張強さに該当するので非常に覚えやすいです。
引張強さは降伏点とは異なり、鋼材の板厚サイズの増加に伴い降伏強度の減少はありません。降伏点について詳しい解説はこちらの記事を参考にしてみて下さい。
SS400の引張強さ
SS400(一般構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 400/510 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3101)
SS490の引張強さ
SS490(一般構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 490/610 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3101)
SN400A,B,Cの引張強さ
SN400A,SN400BおよびSN400C(建築構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 400/510 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3136)
SN490B,Cの引張強さ
SN490BおよびSN490C(建築構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 490/610 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3136)
SM400A,B,Cの引張強さ
SM400A,SM400BおよびSM400C(溶接構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 400/510 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3106)
SM490A,B,Cの引張強さ
SM490A,SM490BおよびSM490C(溶接構造用圧延鋼材)の引張強さは以下のとおりです。
- 490/610 N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3106)
STK400の降伏点
STK400(一般構造用炭素鋼管)の降伏点は以下のとおりです。
- 400N/mm2
参考(JIS G3444)
STK490の引張強さ
STK490(一般構造用炭素鋼管)の引張強さは以下のとおりです。
- 490N/mm2 板厚≦40㎜
参考(JIS G3444)
STKR400の引張強さ
STKR400(一般構造用角型鋼管)の引張強さは以下のとおりです。
- 400N/mm2
参考(JIS G3466)
STKR490の引張強さ
STKR490(一般構造用角型鋼管)の引張強さは以下のとおりです。
- 490N/mm2
参考(JIS G3466)
鉄筋の引張強さ
鉄筋の引張強さも同じくJIS規格によって定められています。一般的な鉄筋は主に以下のようなものがあげられます。
- 丸鋼 SR235 SR295
- 異形鉄筋 SD295 SD345 SD390
SR235の引張強さ
SR235(丸鋼)の引張強さは以下のとおりです。
- 380/520N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3112)
SR295の引張強さ
SR295(丸鋼)の引張強さは以下のとおりです。
- 440/600N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3112)
SD295の引張強さ
SD295(異形鉄筋)の引張強さは以下のとおりです。
- 440/600N/mm2 (下限値/上限値)
参考(JIS G3112)
SD345の引張強さ
SD345(異形鉄筋)の引張強さは以下のとおりです。
- 490N/mm2
参考(JIS G3112)
SD390の引張強さ
SD390(異形鉄筋)の引張強さは以下のとおりです。
- 560N/mm2
参考(JIS G3112)
まとめ
今回は引張強さについてまとめてみました。
引張強さは鋼構造設計をするうちで初めに覚えるべきことです。特に二次設計では必ず必要な数値です。数値自体を暗記する必要はありませんがどのような性質なのかを覚えておいて損はないです。
一級建築士試験においても引張強さについて問われることがありますのでぜひ必ず覚えてください。
引張強さについて確認する場合はぜひ本ブログを読み直してみて下さい!!
参考図書
下記の図書は鋼構造設計の基本的な設計方法を示したものですので、鋼構造設計の基本を学びたいひとは購入を考えてみてください!
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