降伏点とは

構造

今回は金属・建築の鋼構造で使う降伏点についてまとめていきたいと思います。

降伏点は構造計算を行う上で最も重要な値のひとつと言って過言ではないです。

この記事では初学者でも理解できるようにわかりやすく説明していきたいと思います!

降伏点ってなんだ??

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降伏点とは

参考(滋賀県工業技術総合センター金属材料の引張試験の基礎)

一般的に、軟鋼(鉄鋼)の応力-ひずみグラフは図のような特徴を持ちます。初めは線形な領域(弾性域)で応力とひずみが比例しますが、一定の応力まで到達すると非線形な変形が始まります。この領域の境界を降伏点(英:Yield Point)とあるいは上降伏点呼ばれます。(②の点)

さらに力を加えていくと応力は増加せず横ばいあるいは下降線をたどりやがて下降伏点を迎えます。(③の点)

降伏点超えた後は応力が増加と変形が進み④の引張強さに達し、徐々に応力が減っていき最終的に破断します。

一般的には降伏点の記号は[σy]で表し、単位は[N/mm2] で表します。

降伏の条件

金属が降伏する条件には3つの考え方があります。

  • 応力度が材料に固有のある一定値達した場合に降伏する(最大主応力説・最大せん断応力度説)
  • ひずみ度がある一定値達した場合に降伏する(最大主ひずみ度説)
  • 弾性ひずみがある一定値に達したときに降伏する(せん断ひずみエネルギー説)

トレスカ説

トレスカの説 (英:Tresca)(別名:最大せん断応力度説)は金属に生ずる最大せん断応力が材料のせん断強度に達した時降伏を生ずると考えるものです。

トレスカの降伏条件は以下の式で表せます。

\(\max[|\sigma_{1}-\sigma_{2}|,|\sigma_{2}-\sigma_{3}|,|\sigma_{3}-\sigma_{1}|]\geq \sigma_{y}\)

σ1, σ2, σ3:主応力
σy:材料の降伏応力

フォン・ミーゼス説

フォン・ミーゼスの説 (英:von Mises)(別名:せん断ひずみエネルギー説)は弾性体内に貯えられるせん断ひずみエネルギーが、ある一定値に達すると降伏が起こると考えるものです。一般的に鉄骨の設計に使われる説です。

フォン・ミーゼスの降伏条件は以下の式で表せます。

\(\dfrac{1}{2}\{ (\sigma_{1}-\sigma_{2})^2+(\sigma_{2}-\sigma_{3})^2+(\sigma_{3}-\sigma_{1})^2\} \geq \sigma_{y}^2\)

σ1, σ2, σ3:主応力
σy:降伏応力

鋼材の降伏点

鋼材の降伏点はJIS規格によって定められています。一般的な鋼材というのは主に以下のようなものがあげられます。

  • SS400, SS490
  • SN400A,B,C SN490B,C
  • SM400A,B,C, SM490B,C
  • STK400, STK490
  • STKR400, STKR490

鋼材の力点的性質上、板厚サイズの増加に伴い降伏点は減少していきます。

SS400の降伏点

SS400(一般構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 245N/mm2 板厚≦16㎜
  • 235N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 215N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜
  • 205N/mm2 100㎜<板厚

参考(JIS G3101)

SS490の降伏点

SS490(一般構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 285N/mm2 板厚≦16㎜
  • 275N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 255N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜
  • 245N/mm2 100㎜<板厚

参考(JIS G3101)

SN400Aの降伏点

SN400A(建築構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 235N/mm2 6㎜≦板厚≦40㎜
  • 215N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜

参考(JIS G3136)

SN400Bの降伏点

SN400B(建築構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 235N/mm2 6㎜≦板厚<12㎜
  • 235/355N/mm2 12㎜≦板厚≦40㎜ (下限値/上限値)
  • 215/355N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜ (下限値/上限値)

参考(JIS G3136)

SN400Cの降伏点

SN400C(建築構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 235/355N/mm2 16㎜≦板厚≦40㎜ (下限値/上限値)
  • 215/355N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜ (下限値/上限値)

参考(JIS G3136)

SN490Bの降伏点

SN490B(建築構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 325N/mm2 6㎜≦板厚<12㎜
  • 325/445N/mm2 12㎜≦板厚≦40㎜ (下限値/上限値)
  • 295/415N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜ (下限値/上限値)

参考(JIS G3136)

SN490Cの降伏点

SN490C(建築構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 325/445N/mm2 16㎜≦板厚≦40㎜ (下限値/上限値)
  • 295/415N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜ (下限値/上限値)

参考(JIS G3136)

SM400A,Bの降伏点

SM400AとSM400B(溶接構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 245N/mm2 板厚≦16㎜
  • 235N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 215N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜
  • 205N/mm2 100㎜<板厚≦160㎜
  • 195N/mm2 160㎜<板厚≦200㎜

参考(JIS G3106)

SM400Cの降伏点

SM400C(溶接構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 245N/mm2 板厚≦16㎜
  • 235N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 215N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜

参考(JIS G3106)

SM490A,Bの降伏点

SM490AとSM490B(溶接構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 325N/mm2 板厚≦16㎜
  • 315N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 295N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜
  • 285N/mm2 100㎜<板厚≦160㎜
  • 275N/mm2 160㎜<板厚≦200㎜

参考(JIS G3106)

SM490Cの降伏点

SM490C(溶接構造用圧延鋼材)の降伏点は以下のとおりです。

  • 325N/mm2 板厚≦16㎜
  • 315N/mm2 16㎜<板厚≦40㎜
  • 295N/mm2 40㎜<板厚≦100㎜

参考(JIS G3106)

STK400の降伏点

STK400(一般構造用炭素鋼管)の降伏点は以下のとおりです。

  • 235N/mm2 板厚≦40㎜

参考(JIS G3444)

STK490の降伏点

STK490(一般構造用炭素鋼管)の降伏点は以下のとおりです。

  • 315N/mm2 板厚≦40㎜

参考(JIS G3444)

STKR400の降伏点

STKR400(一般構造用角型鋼管)の降伏点は以下のとおりです。

  • 245N/mm2 板厚≦16㎜

参考(JIS G3466)

STKR490の降伏点

STKR490(一般構造用角型鋼管)の降伏点は以下のとおりです。

  • 325N/mm2 板厚≦16㎜

参考(JIS G3466)

鉄筋の降伏強度

鉄筋の降伏点も同じくJIS規格によって定められています。一般的な鉄筋は主に以下のようなものがあげられます。

  • 丸鋼 SR235 SR295
  • 異形鉄筋 SD295 SD345 SD390

鉄筋はSR○○やSD○○の”○○”の部分が降伏点に該当します。

SR235の降伏点

SR235(丸鋼)の降伏点は以下のとおりです。

  • 235N/mm2

参考(JIS G3112)

SR295の降伏点

SR295(丸鋼)の降伏点は以下のとおりです。

  • 295N/mm2 板厚≦16㎜

参考(JIS G3112)

SD295の降伏点

SD295(異形鉄筋)の降伏点は以下のとおりです。

  • 295N/mm2

参考(JIS G3112)

SD345の降伏点

SD345(異形鉄筋)の降伏点は以下のとおりです。

  • 345/440N/mm2  (下限値/上限値)

参考(JIS G3112)

SD390の降伏点

SD390(異形鉄筋)の降伏点は以下のとおりです。

  • 390/510N/mm2  (下限値/上限値)

参考(JIS G3112)

まとめ

今回は降伏点についてまとめてみました。

降伏点は鋼構造設計をするうちで初めに覚えるべきことです。特に許容応力度設計では必ず必要な数値です。数値自体を暗記する必要はありませんがどのような性質なのかを覚えておいて損はないです。

一級建築士試験においても降伏点について問われることがありますのでぜひ必ず覚えてください。

降伏点について確認する場合はぜひ本ブログを読み直してみて下さい!!

参考図書

下記の図書は鋼構造設計の基本的な設計方法を示したものですので、鋼構造設計の基本を学びたいひとは購入を考えてみてください!

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