今回は構造の細長比についてまとめていきたいと思います。
細長比は一級建築士の構造の問題や新築の建物を建てる際の確認申請などでもよく使われるキーワードです。
構造設計に携わる方なら誰もが知っておくべき知識です。大学生や専門学生のひと、これから構造を知りたい方にとっては非常に重要なトピックです!
細長比をわかりやすく説明していきたいと思います。
細長比ってなんだ??
細長比とは
細長比(英:slenderness ratio)は部材の座屈長さに対する断面二次半径の比で表され、
記号は一般的に\(λ\)(スモールラムダ)で表現されます。式で表すと
\(\lambda=\dfrac{Lk}{i}\)
λ :細長比
Lk:座屈長さ
i :断面二次半径
細長比が大きければ、座屈しやすく危なく
細長比が小さければ、座屈しにくく安全
という認識でいましょう。詳しい解説はこちらの記事を参考にしてみて下さい!!
鉄骨の細長比の制限は
鉄骨の圧縮材に対する細長比は建築基準法内(令第65条)で規定されています。
- 柱 λ=200以下
- 柱以外 λ=250以下
逆に、座屈は圧縮時に生じる現象なので座屈しにくいRC部材や引張専用材であれば、細長比の規定から除外することができます。
細長比の計算例
ここで一般的な鉄骨柱の細長比の計算例を見てみます。
[条件]
柱:H-200x100x5.5×8
座屈長さ:6m
断面二次半径:ix=8.23cm iy=2.24cm
(ixを強軸周り iyを弱軸周りとします)
[計算]
\(λ_{x}=600/8.23=72\)
となり細長比の制限λ=72<200を満足しているように思えますが、実際に柱が圧縮力を受けたときに柱が座屈するのは弱軸周り(iy周り)のため
\(λ_{y}=600/2.24=267\)
となり細長比の制限λ=267>200を満足していないため
座屈長さを変更し短くするのか、柱部材を変更しiyを大きくするかの対応が必要となります!!
限界細長比とは
同じく細長比と似たような言葉で全く意味の異なる限界細長比(英:critical slenderness ratio)があります。
限界細長比は弾性域を超えて非弾性域になる細長比のことを指します。
少し難しく言えば
Λ < λ の場合 弾性座屈(オイラー座屈)
Λ > λ の場合 非弾性座屈
記号は一般的に\(Λ\)(ラージラムダ)で表されます。式で表すと
[限界細長比]
\(Λ=\sqrt{\dfrac{\pi^2 E}{0.6F}}\)
E :ヤング係数(N/mm2)
F : 基準強度(N/mm2)
鉄骨の限界細長比計算例を示すと
鉄骨のヤング係数はおおよそ E=205000N/mm2
鉄骨の基準強度はSS400材で F=235N/mm2
\(\Lambda=\sqrt(3.14…^2*205000/0.6*235)=119.8\)
まとめ
今回は細長比についてまとめてみました。
細長比は構造を勉強するうえで最も外すことのできないキーワードで座屈現象と深く関わりがあります。
細長比が大きければその圧縮材は座屈しやすいとわかる一つの目安です。細長比が大きい部材は危険なので細長比に注意して常に設計しましょう!!
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