この記事は許容応力度計算についてわかりやすく解説していきたいと思います。
許容応力度計算は構造設計するうえでも初めに覚えておくべき知識です。ぜひこの記事を参考にしてみて下さい!!
許容応力度計算ってなんだ??
許容応力度計算とは
許容応力度計算とは建築物の設計において、許容応力度と呼ばれる一定の安全率をもたせた応力値を設定し、その許容範囲内で建築物を設計する方法です。
許容応力度計算を簡単に言えば梁・柱部材にかかる応力が部材の持つ許容応力度を上回らないように設計することを指します。それを計算式で示すと、
[許容応力度計算]
\(\sigma<f\)
σ:応力度(N/mm2)
f:許容応力度(N/mm2)
また建築基準法施行令82条の6にある許容応力度”等”計算になると許容応力度計算に加え、層間変形角・屋根ふき材の構造計算・剛性率偏心率の計算などが加わり、別の意味になるので注意してください。
長期と短期とは
許容応力度計算には長期と短期という考え方があります。
長期とは通常時・平時を指し、常に生じている荷重を考慮した状態を指します。基本的には固定荷重と積載荷重のみが作用している状態です。
ほとんどの荷重が鉛直下向きになると思います。(長期で水平方向に荷重がかかることもあります。)
短期とは長期に加え、短期的に生じる事象を考慮した状態を指します。建築基準法では短期として扱うのは積雪荷重・風荷重・地震荷重があります。
例外的に第86条第二項ただし書の規定により特定行政庁が指定する多雪区域では積雪荷重を長期として見込む必要があります。なので多雪区域の短期では長期+積雪荷重+風荷重あるいは長期+積雪荷重+地震荷重といったようにより厳しくなります。
以上をまとめると建築基準法ではこうなります。
[長期に生じる力]
常時: G+P
積雪時: G+P+0.7S (多雪区域のみ)
[短期に生じる力]
積雪時: G+P+S
暴風時: G+P+W
地震時: G+P+K
暴風時: G+P+W+0.35S (多雪区域のみ)
地震時: G+P+K+0.35S (多雪区域のみ)
G:固定荷重
P:積載荷重
S:積雪荷重
W:風荷重
K:地震荷重
許容応力度とは
許容応力度とは建築基準法施行令 第三款 の第89条~94条までに定められています。
- 第89条 木材
- 第90条 鋼材等
- 第91条 コンクリート
- 第92条 溶接
- 第92条の2 高力ボルト接合
- 第93条 地盤および基礎杭
- 第94条 補則
それぞれの性質が異なるので許容応力度は算出方法がバラバラです。
木材の許容応力度
木材の許容応力度は建築基準法施行令第89条に記載があり、基準強度は4種類ありそれぞれFcは圧縮、Ftは引張、Fbは曲げ、Fsはせん断を表します。
長期であれば基準強度×1.1/3倍、短期であれば基準強度×2/3倍
積雪時は長期で基準強度×1.1/3×1.3倍、短期で基準強度×2/3×0.8倍となります。
鋼材等の許容応力度
鋼材等の許容応力度は建築基準法施行令第90条に記載があります。炭素鋼・ステンレス鋼・鋳鉄と種類がありますが性質はほとんど同じと考えてください。
機械的性質が一様であるので基準強度はFの1種類で統一され、引張・圧縮・曲げはFを使い、せん断のみF/√3となります。
長期であれば基準強度×2/3倍、短期であれば基準強度×1.0倍となり、
鋼材の短期許容応力度は長期×1.5倍と覚えましょう
コンクリートの許容応力度
コンクリートの許容応力度は建築基準法施行令第91条に記載があります。基準強度はFcの1種類で統一します。
コンクリートの性質上 圧縮に強く引張に弱いので、
圧縮の長期はFc×1/3倍、短期はFc×2/3倍
引張・せん断の長期はFc×1/30倍、短期はFc×2/30倍
コンクリートの短期許容応力度は長期の2倍と覚えましょう
溶接の許容応力度
溶接の許容応力度は建築基準法施行令第92条に記載があります。
基本的には鋼材等の許容応力度と同じで基準強度はFの1種類で統一します。突合せと突合せ以外で区別され、
突合せは長期で基準強度×2/3倍、短期であれば基準強度×1.0倍となります。せん断には1/√3倍をかけます。
突合せ以外はすべてせん断応力度として扱い、長期であれば基準強度×2/3√3倍、短期であれば基準強度×1/√3倍となります。
高力ボルトの許容せん断応力度
高力ボルトの許容せん断応力度は建築基準法施行令第92条の2に記載があります。
高力ボルトの許容せん断応力度は基準張力Toの1種類で表します。
せん断面数によっても変わります。1面せん断であれば長期は基準張力×0.3倍、短期であれば基準強度×0.45倍となります。
2面せん断は1面せん断の2倍で、長期は基準張力×0.6倍、短期であれば基準強度×0.9倍となります。
短期許容せん断応力度は長期×1.5倍と覚えましょう
地盤および基礎杭の許容応力度
地盤および基礎杭の許容応力度は建築基準法施行令第93条に記載があります。
ただし地盤および基礎杭は実際の地盤に沿って設計しないと安全に建物を立てることができないので地盤耐力は非常にシビアです。したがって国土交通大臣が定める方法によって、地盤調査を行いその結果に基づいて定めなければならないので参考程度にしましょう。
短期許容応力度は長期×2倍と覚えましょう
まとめ
今回は許容応力度計算についてまとめてみました。
許容応力度計算は構造設計をするうちで最初に覚えるべき設計方法の一つです。この設計によって部材サイズ・材質を決めたりしていきます。
一級建築士試験において許容応力度計算について問われることはほとんどありませんが、法規では障りの部分を学びます。
構造設計を生業とする場合は絶対に覚えていってください。
許容応力度計算は必須キーワードです。許容応力度計算を確認する場合はぜひ本ブログを読み直してみて下さい!!
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