こんにちはTOMです。
建築士試験の一次の学科試験が終わりはや一ヶ月が経ち、製図試験の課題も決まり試験本番に向けて勉強している人も多いと思います。まだまだ時間があるから大丈夫と思っている人も多いかと思いますが、実際に去年(2020年に)受けた私としてはこの7月、8月というのは非常に大事な期間だと思います。9月からは徐々に焦り始めてしまうので今のうちにできることはやっておきましょう。そして今回の記事では製図試験の法規に引っかからないための基礎知識についてまとめていきたいと思います。
なぜ法規が大事かといえば、昨年と一昨年のデータを見ていただければわかると思いますが
合格ラインはランクⅠだけなのに対してランクⅡの割合が圧倒的に少ないこと、そして法規ミスのランクⅣが不合格者の大半を占めていることから、大げさに言えば法規ミスさえしなければ合格できる。合格できる可能性が十分にあるといえます。いまここで法規のことを徹底的に行えば合格へグッと近づくと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
絶対に守るべき法規はなんだ!?
それではよろしくお願いいたします。
ミスしていけない法規項目
初めて受験する方が間違えやすくそして即失格となる重要な法規ミスを以下に示していきます。大きくは5つの項目がありどれも間違えられません
- 高さ制限
- 建ぺい率・容積率
- 延焼ライン
- 特定防火設備・防火設備
- 2方向避難・歩行距離・重複距離
製図試験の合格には
- 第一に図面と答案をすべて完成させること
- 第二に法規を絶対守ること
何度も言いますがこれらの項目を一つでも間違えたら失格です。逆を言えば間違えなければ合格できる可能性があるのです。これら今のうちからしっかり対策していきましょう!
1. 高さ制限
高さ制限は建物を建てる時に隣接する建物の日照条件等を考慮するために設けているモノです。法規の学科試験でも出題されていましたので知っている人も多いと思いますが、求められる計算過程は学科試験と異なり製図試験は①指定された階数から自分である程度必要な建物高さを算出し、②用途地域をみてセットバック距離を決めていくという順番になるのです。そして高さ制限は大きく分けて3つ「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」があります。どれも計算方法が違いますがすべて試験中に計算を行います。それぞれの違いを見ていきましょう!!
a.道路斜線制限
道路斜線制限は道路側に面する境界線からの斜線制限のことで試験では少なくとも一カ所以上道路に面することから必須な計算です。間違えやすくとても複雑なのでシンプルな考え方を説明していきます。
まず初めに前面道路の幅員を決めなくてはいけません。
建築基準法による前面道路の幅員の決まり方は…幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離が、その前面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35m以内の区域及び、その他の前面道路の中心線からの水平距離が10mをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。
これが文字で見てもわかりづらいため図にまとめました。2面道路のパターンは大きく分けて2つ(L字型と挟まれる型)だと思います。
まず①幅員(大)から2A または35m以内の範囲は前面道路幅員L=Aとして考えます。
例えばA=12mであれば2A=24m なので道路の境界線から24mまで、A=18mの時は2A=36mで35mのほうが小さいので 道路の境界線から35mまでになります。
よく間違えやすいのは左図の幅員(小)から道路斜線制限を考えたときに前面道路Lを幅員Bにしてしまいがちです。
次に② の幅員(小)の道路中心線から10m以内の範囲は前面道路幅員L=Bとして考えます。 ここの幅員を間違えてしまうと高さ制限で即失格になってしまうので気をつけてください。
最後に③ の幅員(大)から 2Aまたは35m以上で 幅員(小)の道路中心線から10m超の範囲は 前面道路幅員L=Aとして考えます。 他であまり言及されていないですが、前面道路の最後の一文から「 前面道路の中心線からの水平距離が10mをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 」と記載があります。つまりはその他の範囲は最大幅員とみなします。
以上をまとめると②の範囲だけ気を付ければ失格ありません。したがって前面道路の幅員の考え方は②の範囲だけ覚えておくことです。
これで前面道路の幅員Lが決まりました。その幅員Lをもとにセットバック距離を決めていきます。下図でまとめました。
住居系と商業系で係数は変わるものの計算方法は変わりません。建物高さの設定方法は問題文に階数指定があれば階高をざっくり4mそしてパラペットの一般的な高さ0.6mと仮定して(階数)x4m+0.6mとし建物高さHが決まりました。あとは図のようにセットバック距離aを算出します。
b.隣地斜線制限
隣地斜線制限は隣が建物に面する境界線からの斜線制限のことです。試験問題の敷地によって出ない場合もありますが頻出の計算項目です。必ず覚えて下さい。逆を言えば隣が公園や河川あるいは先の道路が4面の場合は制限自体がありません。
隣地斜線は道路斜線のように前面道路の幅員は関係ないので、仮の建物高さを決めてセットバック距離を決めていきます。用途地域による計算の違いは①係数と②斜線制限の起点の高さです。逆算して住居系で20m以下、商業系で31m以下の建物であればそもそも検討する必要ないということです。
c.北側斜線制限
北側斜線制限は北側に面する隣地境界線からの斜線制限のことです。北側隣地住宅の日当たりに配慮し設けられた規制です。隣地斜線制限と同様に試験問題の敷地によって出ない場合もありますが必ず覚えて下さい。
北側斜線制限は用途地域①第一種及び第二種低層住居専用地域と②第一種及び第二種中高層住居専用地域によって斜線制限の起点高さが5mか10mで異なります。(斜線勾配は同じです。)
北側斜線は隣地境界線または北側道路に面する場合は道路反対側の境界線から斜線が伸びます。
加えて一級建築士試験の問題に第一種及び第二種低層住居専用地域が出題されることはほぼないでしょう。理由には第一種及び第二種低層住居専用地域には絶対高さ制限があり3階以上の建物になった途端、高さ制限で法規に引っかかるため。一級建築士試験の出題の都合上、【用途地域】第一種及び第二種低層住居専用地域は出題できないと思います。したがって第一種及び第二種中高層住居専用地域を覚えておくべきだと考えます。
北側斜線制限が隣地斜線、道路斜線と異なることはセットバック距離緩和がないことと北側のみ検討すればよいことです。
d.忘れがちな点
ここまで3つの斜線制限について説明してきましたが、ここで試験本番や模試で間違えやすい、失敗しやすい例を紹介します
- バルコニーや庇の加えてセットバック距離が変わる
- 塔屋が斜線制限に引っかかる
バルコニーや庇を後に計画してセットバック距離が変わるときはよくあります。もともと柱芯で考えていたものがバルコニーの片持ち長さ分セットバック距離は小さくなってしまい結果として斜線制限にかかることは設計製図に慣れている人でも忘れてしまいがちです。
予防方法としては
①初めからセットバック距離2m分余裕を見ておく
②最上階または制限が厳しそうな箇所にバルコニー庇を追加したら逐一検算すること
②の計算方法はセットバック距離a’の値を変更し道路斜線は(2a’+L)x1.25>H、 隣地斜線は(2a’)x1.25+20>H と再確認しましょう
次に塔屋を屋上に計画するときです。塔屋の高さは基本的に建物高さに見込む必要があるのでHが大きくなってしまい制限に引っかかってしまうことがあります。これもランクⅣになってしまうよくある例です。
予防方法としては
①初めから塔屋高さ約3.5m程度余裕を見ておく
②塔屋へ続く管理階段、EVは建物の端に計画しない
③斜線制限にかかりそうな塔屋を端に計画したら逐一検算すること
④塔屋の面積を建築面積の1/8以下に抑える
塔屋高さは建築面積の1/8以下の面積であれば建物高さに算入しないという規定もあるのでそれを利用したのが④です。
④のざっくりとした計算方法は問題文の敷地面積と建蔽率からまず建築可能面積を出します。建築可能面積に1/8をかけて納めるべき塔屋の面積を出します。多めに見積って1スパン7×7=49㎡
納めるべき塔屋面積が49㎡を上回る場合は建物高さに算入してください。
去年(2020年度)の例でいくと
敷地1836㎡建蔽率80%でしたので建築可能面積1468㎡の1/8は183㎡以下の塔屋なら建物高さに塔屋高さを算入しなくてよいということになります。もちろん最初の段階での計算なので最後に自分で計画した建築面積に1/8をかけて確認することは必須です。
2. 建蔽率・容積率
建蔽率・容積率は高さ制限ほど計算が難しいものではありませんし、むしろシンプルです。ただしミスをしてしまうと一発アウトの項目ですので覚えることは必須です。
a.建蔽率
建蔽率とは…敷地面積に対しての建物面積の割合
建蔽率 = 建築面積 / 敷地面積
法規の学科試験では建蔽率を算出する問題は頻出ですが、製図試験では課題文にて数値が与えられているため建蔽率を出すことはないです。では何を計算するかといえば自分が建物を計画するうえで敷地に対してどのくらい広い建築物を建てられるかどうかの建築可能面積を算出するときに用います。
注意しなければならないのは建築面積の出し方です。建築面積はただ上から見たときの柱芯間の面積(水平投影面積)だけでなくバルコニーや庇も算入しなければならず、そのバルコニー、庇の面積は1m後退して算入します
b.容積率
容積率とは…敷地面積に対する延べ床面積の割合
容積率 = 延床面積 / 敷地面積
法規の学科試験では建蔽率と同じく容積率を算出する問題は頻出ですが、製図試験では課題文にて数値が与えられているため容積率を出すことはないです。加えてあまり容積率に関して製図試験では言及されていないのも確かで、理由としては課題文の中で建物の建築面積があらかじめ決められておりその建築面積/敷地面積すると与えられた容積率を下回るからです。ただしこれはあくまで過去の話であるため今後どうなるかはわかりませんので(出題者の意地悪で与えられた延べ面積よりも容積率のほうが小さく設定する可能性は無くはないです)一応覚えておく必要があります。
去年(2020年度)の例でいくと
【課題文】敷地面積1836㎡容積率200%床面積2400~3000㎡
延床面積3000㎡/敷地面積1836㎡=1.63 →163%<200%のため
仮に延床面積最大3000㎡で計画したとしても、容積率は十分満足していますので課題文の延床面積の規定だけを守ればよいです。ただし容積計算はもしものためにしておきましょう!!
3. 延焼ライン
延焼ラインとは延長の恐れがある部分を線で表したものです。延焼ラインの外側にある建物は隣の建物からの延焼による危険性が高くなるため法律で設定されています。製図試験における延焼ラインは図面に図示しなければならないものです。与えられた課題文には毎年のように下図のような一文が記載されており、これを見逃した場合も即ランクⅣになってしまう極めて重要な内容です。
延焼ラインは1階で隣地境界線または道路境界線から3.0m 、2階以上で隣地境界線または道路中心線から5.0mになります。下図にわかりやすく示しました。よくやる間違いとして3階以上や基準階の平面図に延焼ラインを書き忘れる人がいますがそれも即失格です。2階以上は延焼ライン5.0mと忘れないでください。
4. 特定防火設備・防火設備
まず特定防火設備と防火設備の話をする前に抑えておかなければいけないのが防火区画の考え方です。
防火区画の主な種類は以下の4つ「面積区画」「竪穴区画」「異種用途区画」「高層区画」でさらに一級建築士製図試験で取り扱うのは面積区画と竪穴区画しかありません。
面積区画とは…1フロアで考えたときにあまりに広すぎた場合延焼が抑えられなくなるのである程度の範囲で区切ろうという考え方です。 一般的に躯体をRCで作るので主要構造部は耐火構造となります。そして耐火構造の面積区画で最も厳しい規定は①1500㎡以内に区画することと②開口部は特定防火設備にすると覚えておいてください
竪穴区画とは…炎は上に行こうとする力が強いため縦のいくつかのフロアで区切ろうという考え方です。 主要構造部は耐火構造で3階以上に居室を計画する場合(ほぼ100%)は竪穴区画が必要です。 ①開口部は防火設備にすると覚えておいてください
製図試験で出題されるのが面積区画と竪穴区画だけということが分かり、次に特定防火設備と防火設備の違いについて説明します
特定防火設備とは…火災の拡大を防ぐために、遮炎性能の高い開口部や扉のことで1時間耐火性能が必要な設備です
防火設備とは… 同じく火災の拡大を防ぐために、遮炎性能の高い開口部や扉 のことで20分耐火性能が必要な設備です
ここまでで特定防火設備と防火設備の基礎を学んできてそして結局試験では何が必要かということです。実際の試験では以下の図のような〇特〇防の記号を用いて防火区画の必要とされる該当箇所(主に扉や開口部)に図示する必要があります。
必要な箇所は
- 階段・エレベーターの扉 (竪穴区画、面積区画)
- 吹抜け周りのシャッターや開口部(竪穴区画、面積区画)
- 延焼ラインの外側の開口部
a.階段・エレベーターの扉
階段・エレベーターは竪穴区画に該当するのため防火設備にしなければなりません。しかしながら試験ではよく特定防火設備と図示します。理由は竪穴区画だけでなく面積区画を兼ねているため例えば1階2階合計床面積が1500㎡を超えた場合面積区画をしなければいけないため、防火設備では不十分になってしまいます。したがって”一般的に”竪穴区画面積区画するため階段・エレベーターの扉は特定防火設備にします。逆を言えば1フロアで2つに区画し面積区画をクリアした場合は階段・エレベーターの扉は防火設備にしてよいということになります。
b.吹抜け周りのシャッターや開口部
吹抜け周りのシャッターや開口部は竪穴区画に該当するのため防火設備にしなければなりません。しかしながら試験ではよく特定防火設備と図示します。理由は階段・エレベーターと同じで竪穴区画だけでなく面積区画を兼ねているためです。したがって”一般的に”吹き抜け周りのシャッターや扉・開口部は特定防火設備にします。また吹抜けの”避難階とその直上階”つまり試験で言う”1階と2階”では竪穴区画は不要→防火設備不要になりますが、多くの場合で面積区画で1500㎡を超えてしまうので特定防火設備にします。
間違えやすいのは防火シャッターの〇特マークとそれに付随する防火扉の〇特マークは2つとも描く必要があります。
c.延焼ラインの外側の開口部
延焼ラインの外側にあるつまり延焼の恐れがある開口部は防火設備を図示する必要があります。そもそもなぜ延焼の恐れがある開口部に防火設備が必要かですが、まず①防火地域か準防火地域に該当するか確かめます。②要求される床面積が防火地域なら100㎡以上準防火地域なら1500㎡以上(100%該当する)の時に建物は耐火構造としなければいけないからです。そして③耐火構造の要求事項として延焼の恐れがある開口部には防火設備が必要であるからです。
5. 2方向避難・歩行距離・重複距離
最後に2方向避難・重複距離の規定です。
2方向避難とは…2階以上のフロアでは非常に円滑な避難ができるように階段は2つ以上計画する必要があります。建物によっては階段を2つ以上計画しなくていい場合もありますが、基本課題文の中に以下の課題文抜粋ような記載があるため必ず2つ以上の階段を描くものとして認識してください。
歩行距離とは…2階以上の各階での直通階段までの最も遠くなる距離を歩行距離といいます。言い換えると階段から一番遠い部屋の一番奥から考えて2つ以上階段がある中で一番近い階段までの距離のことを指します。そして法律で定められた歩行距離は飲食店や美術館のような店舗としての用途は40m以下。それ以外の用途であれば60m以下とします。
重複距離とは…2つ以上の避難経路があり重複する区間がある場合、重複距離は直通階段に至る歩行距離の2分の1以内にする必要があります。つまり歩行距離を決め一番近い階段に向かう途中でもう一つの階段を目指した場合に重複する区間があるならば、 飲食店や美術館のような店舗としての用途は40mの半分の20m以下。それ以外の用途であれば60mの半分の30m以下でなければなりません
【課題文抜粋】
2 階平面図及び 3 階(基準階)平面図には、次のものを図示又は記入する。
イ.居室の最も遠い位置から 2 の直通階段に至る歩行経路を図示し、その一に至る歩行距離及び重複区間の長さ
まとめ
製図試験に受かりたいのであれば必ず守らなくてはいけない法規定5つ紹介してきました。
以上、TOMでした!!
コメント
延焼ラインの距離が1階と2階以上で逆になっていることと道路の距離の起点は道路境界線ではなく道路中心からとなります。
ご連絡ありがとうございます。
こちらのミスでございます。チェックが不十分でした。ブログを修正いたします。
テストの合否に関わるため正しい情報の提供に努めて参ります。
今後ともよろしくお願いいたします