塑性断面係数とは

構造

今回は構造の塑性断面係数についてまとめていきたいと思います。

塑性断面係数は一級建築士の構造の問題や構造設計の二次設計などでもよく使われる重要キーワードです。構造設計に携わる方なら誰もが知っておくべき知識です

似た言葉で断面係数があり混同しやすいのでわかりやすく説明していきたいと思います!

塑性断面係数って断面係数と何が違うの??

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塑性断面係数とは

塑性断面係数(英:plastic section modulus)は部材の全断面が降伏した状態ではっきする曲げに対する抵抗係数になります。

塑性断面係数は全塑性モーメントと降伏応力度から算出される値で断面積を2等分する軸に関する両サイドの断面一次モーメントの和になります。

記号は一般的に [Zp] で表現されます。単位は[mm3]または[cm3]と表現されることが多いです。式で表すと

\(Z_{p} = \dfrac{M_{p}}{\sigma_y}\)

Zp:塑性断面係数
Mp:全塑性モーメント
σy:降伏応力度(N/mm2

名前が似ていることから断面係数の式とも間違われることもありますが意味が全くことなります。断面係数について詳しくはこちらの記事を参考にしてみて下さい!

全塑性モーメントとは

全塑性モーメント(英:full plastic moment)とは上図の右にあるような状態で部材断面が完全に塑性化したときのモーメントのことを指します。

図のようにある曲げモーメントMが作用したときの曲げの縁応力は\(\sigma\)になり、断面に作用する曲げモーメントMが徐々に大きくなると図の右側のように進んでいきます。

そして断面の端の最外縁応力度が降伏強さ\(\sigma_{y}\)に達し、この時のモーメントを降伏モーメントMy(英:yield moment)と呼びます。

断面縁側から順に塑性化していき最終的に断面すべてが塑性化する全塑性状態になります。つまり全塑性状態時のモーメントのことを全塑性モーメントといいます。

塑性断面係数の公式

塑性断面係数の公式は断面の形状によってそれぞれ異なりますので、ひとつずつ示します。

長方形の塑性断面係数 

長方形:\(Zp=\dfrac{BH^2}{4}\)

B:断面幅
H:断面せい

円の塑性断面係数

円:\(Z_{p}=\dfrac{4}{3}R^3=\dfrac{d^3}{6}\)

R:半径
d:直径

H形鋼の塑性断面係数

強軸:\(Z_{p}=Bt_{f}\cdot H_{f}+\dfrac{t_{w}H_{f}^2}{4}\)

弱軸:\(Z_{p}=\dfrac{t_{f}B^2}{2}+\dfrac{H_{f}\cdot t_{w}^2}{4}\)

B:断面幅(弱軸方向長さ)
H:断面せい(強軸方向長さ)
Hf:フランジ中心間距離(H-tf)
tf:フランジ厚
tw:ウェブ厚

塑性断面係数の求め方

塑性断面係数の求め方

塑性断面係数 =(圧縮断面積 または 引張断面積)×(断面積を2等分する軸から断面図芯からの距離)

塑性断面係数の求め方は(圧縮or引張断面積)×(断面積を2等分する軸から断面図芯からの距離)で求めることができます。図に示すと

このようになり簡単な長方形断面でBが幅、Hがせいとした場合

圧縮・引張側のそれぞれの断面積は\(BH/2\)

断面を2等分する中立軸からの距離は\(H/4\)

したがって\(BH/2 × H/4 ×\) 2ヶ所 になるので

\(Zp=\dfrac{BH^2}{4}\)

塑性断面係数の求め方に重要な考え方があり、全断面降伏時の中立軸は断面の軸応力度の合力が0であることです。式で表すと

\(\displaystyle Zp=\int_{At} |\xi|dA+\int_{Ac} |\xi|dA\)

Ac At:圧縮・引張断面積
ξ:中立軸からの距離

シンプルに言い換えると引張側と圧縮側の断面積が一致します。

対称的な断面の場合は重心軸で圧縮と引張の境界線があるので重心軸を基点になり、
非対称断面の場合は断面を2等分する軸を基点になります。

間違えやすいのは”重心軸と中立軸は常に一致はしない”ことです。ここでの重心軸・中立軸の定義

  • 重心軸は断面一次モーメントから求まる軸
  • 中立軸は断面を2等分する軸

詳しい断面一次モーメントの求め方についてはこちらの記事を参照してください!
断面一次モーメントとは

極端な例を示すと等辺アングル材:L-100x100x10の場合。重心軸と中立軸はズレています

計算で求めると、重心軸は断面一次モーメントから計算できます。中立軸は軸を挟んで断面積が同じになるよう全断面積÷2の位置に線を描くだけです。

図でもわかるように重心軸はやや上側よりであるのに対して断面積を2等分する中立軸は下側にずれてしまうので、一概に重心軸と中立軸は常に一致はしないことがわかります。

過去に一級建築士で出題された問題についてはこちらを参考にしてください(軸力と曲げが同時に作用する場合の塑性断面係数について)2020年一級建築士 学科Ⅳ(構造) 問1 全塑性モーメント

まとめ

今回は塑性断面係数についてまとめてみました。

塑性断面係数は全塑性モーメントと降伏応力度から算出される値です。求め方は(断面を2等分する軸からの距離)×(圧縮・引張側断面積)で求めることができます

断面を2等分する軸というこの重量なキーワードです。対称断面では気にする必要はないですが非対称断面の時は気をつけてください!!

断面係数と求め方が異なるので混同しないように気を付けましょう!!

塑性断面係数の求め方

塑性断面係数 =(圧縮断面積 または 引張断面積)×(断面積を2等分する軸から断面図芯からの距離)

コメント

  1. 学生1 より:

    H形鋼の塑性断面係数の中にある、Hf:フランジ中心間距離(H-2tf)は、図を見る限りでは、(H-tf)が正しいのではないでしょうか。

    • TOM より:

      ご連絡ありがとうございます。
      その通りです。こちらのミスでございます。
      ブログを修正いたします。
      今後ともよろしくお願いいたします

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