2020年一級建築士 学科Ⅳ(構造) 問5 解説(トラスの計算)

一級建築士試験

今回は2020年度一級建築士 学科試験Ⅳ構造のNo.5の問題についてまとめていきたいと思います

今回は構造力学のトラス構造の問題から出題されています。トラス構造は節点法や切断法を使って解くのが主流です

しかしトラス構造が苦手な人も多いとおもいます。この記事では初学者でも理解できるようにわかりやすく説明していきたいと思います!

トラス構造!!どうやって解くの!?

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問題 No.5

2020年一級建築士 学科Ⅳ(構造) No.5

[No.5]
図のような荷重が作用するトラスにおいて、部材A、B、C及びDに生じる軸方向力をそれぞれNA、NB、NC及びNDとするとき、それらの値として、誤っているものは、次のうちどれか。ただし、軸方向力は、引張力を「+」、圧縮力を「-」とする。

[選択肢]

  1.  \(N_{A}=-\frac{5\sqrt{2}}{2}P\)
  2.  \(N_{B}=-5P\)
  3.  \(N_{C}=-\frac{\sqrt{2}}{2}P\)
  4.  \(N_{D}=0\)

この問題キーワードは

  • 切断法による求め方
  • 軸力0部材の見つけ方

になります。難しいことはないのでぜひ覚えてください

前提条件

この問題は以下の知識について問われています

  • トラス構造
  • 切断法とは
  • トラスの軸力0部材の見つけ方

ひとつずつ紐解いていきましょう!!

トラス構造とは

トラス構造とは部材を三角形につなげ、部材の接合部をピンとして扱う架構を指します。

トラスを構成する部材には軸力しか働かないため、せん断力、曲げモーメントは発生しないものとします。

トラス軸力の前提条件

トラスは軸力しか負担しません。軸力とは一般に引張力および圧縮力のことです。

トラスでは軸力が引張・圧縮どちらなのか判断がつかなくなるので通例的に

  • 引張力を正(プラス)
  • 圧縮力を負(マイナス)

として表現します、もちろん逆に考えても支障はありません。

つり合い式をたてるときに軸力の向きは

  • 節点を引くような向きを引張力
  • 節点を押し込むような向きを圧縮力

と軸力を仮定します。答えが正であれば仮定した軸力の向きで合っており、負であれば仮定した軸力の逆の向きとわかります

切断法とは

切断法とは軸力を求めたい部材を切断しモーメントのつり合い式から軸力を求めることができる方法を指します

切断法のメリット軸力を求めたい部材をすぐに求められる点です

切断法のデメリットは切断できる軸力の未知数が4つ以上になると解くことが不可能になります

したがって切断できる箇所は自然と決まるので複雑なトラスには切断法が使えません

切断法の解き方は

  1. 支点反力をもとめる
  2. 部材を仮想的に切断する
  3. 求めたい軸力を計算できる節点からモーメントのつり合い式を求める

のように行います詳しくはこちらの記事を参考にしてみて下さい

切断法とは

軸力0の部材の見つけ方

トラスにおける軸力0の部材を見つける方法として節点を直線につなぐトラス構造には法則があります。この法則をつかう条件は

  • 2つの部材が直線上に接続されていること
  • 節点に接続する部材数は3つであること
  • 節点には荷重(外力)が作用しないこと

上記の図の場合でみると直線上の2つの部材の軸力(引張・圧縮力)は力のつり合い式によって常につり合うため

\(N_{1}=N_{2}\)

対して直角方向(図の場合は鉛直方向)の力が0でないと、力のつり合い式が成立しないためN3の軸力は必ず0になります。(斜めに取りつく場合でもN3の軸力は0)

\(N_{3}=0\)

①節点には荷重(外力)が作用する場合かつ②3つ目の部材が直角に取りつく場合

直線上の部材の軸力(引張・圧縮力)は常につり合い、直角方向(図は鉛直方向)の力がPでないと力のつり合い式が成り立たないため\(N_{3}\)(直線上にない部材)の軸力は常に荷重Pと一致します。

\(N_{1}=N_{2}\)
\(N_{3}=P\)

3つ目の部材が斜めに取りつく場合は直角方向の力がPになるように力のつり合い式を求めると

\(N_{3}\cos\theta=P\)

一方で\(N_{3}\)の水平成分の力が発生することにより

\(N_{1}≠N_{2}\)

となるので注意しましょう!

解き方

解く順序は

  1. 軸力0部材を洗い出す
  2. 支点反力を求める
  3. 切断法で軸力を算定する

ひとつずつ算出していきましょう

1.軸力0部材を洗い出す

まずは軸力0の部材は最初に探しておきます。先ほど紹介した軸力0の見つけ方を適用すると

直線となる2つの部材とそれに取りつく1つの部材で構成されている箇所は3つ該当するので、したがって\(N_{D}=0\)となることがわかりました

2.支点反力を求める

つぎはトラスの支点反力を求めます

水平反力は片側ローラー支点かつ水平荷重がないので0と瞬時にわかります

鉛直反力もシンメトリー(対称軸を持つ)モデルなので左右の反力は同じになるので

\(R_{1}=R_{2}=\dfrac{5}{2}P\)

つぎに切断箇所を決めます

3.切断法で軸力を算定する

つぎからは順次、切断法を行い軸力を算定します。

1回ではすべての軸力が求まらないので数回に分けます、まずはAの軸力を求めたいので部材Aを切ります。

NA:O2点まわりのモーメントのつり合い

\(\dfrac{5}{2}P\times l-N_{A}\times\dfrac{l}{\sqrt{2}}=0\)

\(N_{A}=\dfrac{5\sqrt{2}}{2}P\)

NAを節点を押し込む向きに設定し

つぎにB・Cの軸力を求めたいのでB・C・E部材を切り、NBを求めるためCとEの交点O3からつり合い式を出します

NB:O3点まわりのモーメントのつり合い

\(\dfrac{5}{2}P・2l-P・l-N_{B}・l=0\)

\(N_{B}=4P\)

NBを節点を押し込む向きに設定したので圧縮力となります。

つぎにCの軸力を求めたいので未知数Eの直線上で任意点のO2からつり合い式を出します

NC:O2点まわりのモーメントのつり合い

\(\dfrac{5}{2}P・l+P・l-N_{B}・l+N_{C}・\dfrac{l}{\sqrt{2}}=0\)

\(N_{C}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}P\)

NCを節点を押し込む向きに設定したので圧縮力となります。以上をまとめると

  •  \(N_{A}=-\frac{5\sqrt{2}}{2}P\)
  •  \(N_{B}=-4P\)
  •  \(N_{C}=-\frac{\sqrt{2}}{2}P\)
  •  \(N_{D}=0\)

となり答えは②でした

まとめ

今回は2020年 一級建築士 学科試験Ⅳ構造 No.5の解説をしてきました

切断法については解き方も特殊で忘れてしまう人も多いかと思いますが、解き方のコツをちゃんと理解できれば軸力の向きなども含めて簡単に解くことができます

詳しい解説を記事にしていますので、ぜひ切断法の記事もあわせて是非参考にしてみて下さい!!

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